奥利根ワイナリー 群馬県昭和村

群馬県のほぼ中央に位置し、日本百名山のひとつに数えられる赤城山

郷土の名所旧跡や人物をうたい、県民に広く親しまれている「上毛かるた」にも

「裾野は長し赤城山」とあるように、山裾にはゆるやかな高原地帯が広がる。

その広大な山麓の西側に、2004年に開業したのが奥利根ワイナリー(昭和村)だ。

 

関越自動車道の昭和インターチェンジ(IC)から車で10分ほど。

標高約700メートルの高原に広がる面積約3ヘクタールのブドウ畑に囲まれて

ワイン工場が建つ。

奥利根ワイナリーはここで、ブドウの栽培からワインの醸造までを一貫して手掛ける。

従業員7人、家族経営の小規模なワイナリーだ。

 

栽培するブドウはシャルドネメルローピノ・ノワールといった品種を中心に

9000本ほど。

運営する奥利根ワイン(同村)の2代目代表、金井圭太さんは

「この土地に合うかどうか試しながら、少しずつ品種を植え替えている」と話す。

 

金井さんが目標に掲げるのは「テロワールを感じられるワインをつくること」。

テロワールとはフランス語で、産地の気候や地形・土壌などの複合的な地域性のこと。

「土地の味わい」といった意味合いだという。

 

赤城高原は水はけのよい火山灰の土壌と昼夜の寒暖差の大きさが特徴で、

糖度の高いブドウができる。

糖度が高いと、通常はワインの酸味が落ちるが

「高原でブドウを栽培すると、

糖度が高くてもシャキッとした酸味がワインの中に残りやすい」。

 

自社栽培のブドウを100%使ったこだわりのワインが「I'm(アイム)」シリーズ。

赤・白とスパークリングがある。

金井さんは「和食と相性がいい。白ワインなら天ぷら、

赤ワインなら肉ジャガやすき焼きとよく合う」と説明する。

 

ワイナリー内の売店で、今年も4月から販売を始めた。

ただ、21年の天候不順の影響で今年はブドウの量があまり確保できず、

例年と比べ販売量が大幅に少なくなる見込みだ。

例年はオンラインでも販売しているが、

「今年は売店のみでの販売になりそう」だという。

 

ワイナリーにはレストランも併設され、

金井さんがシェフとして腕をふるう。

完全予約制で、地元食材を使ったランチを楽しめる。

レストランからは周囲に広がるブドウ畑や、谷川岳などの山並みを一望できる。

1グループ2000円で、農場やワイナリーの見学も受け付ける(要予約)。

 

奥利根ワインを1991年に創業したのは、金井さんの伯父にあたる井瀬賢さんだ。

建設会社に勤めていたが脱サラし、

酒屋経営を経てリンゴを使ったワイン造りに着手。

2000年に現在の土地を買い取り、開墾してブドウ栽培を始めた。

 

井瀬さんは10年ほど前にワイナリーの経営から退き、

前橋市で予約制の飲食店「しゃぶしゃぶ向島」を開業した。

奥利根ワイナリーの「サテライトルーム前橋」も兼ねていて、

ここでも同ワイナリーのワインを楽しめる。