ガチ中華

中国出身者をうならせる「ガチ中華」が首都圏を中心に広がっている。

東京・高田馬場など、新たな中国グルメの街として認知されているエリアも多い。

長年本場の味を追う専門家は、身近な外国人との共生のきっかけになると考える。

 

JR西川口駅(埼玉県川口市)を出ると目に入るのは中国語の看板の数々。

鮮やかなネオンに目を奪われ「滕記鉄鍋炖(とうきてつなべどん)」に入ると、

聞こえる声の多くは中国語だ。

「故郷の味をそのまま味わってほしい」。

同店の興艶萍(こう・えんへい)さんは黒竜江省出身で、2018年に店を開いた。

 

同省を含む東北地方の料理は羊肉や発酵野菜をふんだんに使う「田舎料理」。

一番人気の「東北農家鍋」はインゲンやスペアリブなどを煮込み、

鉄鍋の側面に貼り付けたトウモロコシのまんじゅうと一緒に食べる。

羊肉をクミンなどのスパイスで焼いた串は酒が進み、

ふんわりしたキビ団子であんを包んだ「東北大福」はどこか懐かしい気分に浸れる。

 

客の7割は中国人だが、

最近は東京や神奈川などから通う日本人の常連も多いという。

「初めての料理でも肉のうま味を感じられて大満足。中国酒にも合う」。

店を訪れたさいたま市の公務員の女性(33)は満足げだった。

 

「新版攻略!東京ディープチャイナ」(産学社)を出版した

東京ディープチャイナ研究会の中村正人さんは

旅行ガイド本「地球の歩き方」の編集者として中国各地の料理を体験したが、

5年ほど前から国内でも本場の味が多く登場していると実感する。

 

中村さんによると、ガチ中華の歴史は1990年代に遡る。

就学生などとして訪れた中国人は、

当時在日中国人のビジネスの街となっていた東京・池袋に集まるようになる。

中国人向けの食材店や旅行会社、不動産紹介会社などが広がった。

川口では00年代に違法風俗店などが一掃されたのを機に、

多くの中国人が飲食店を出し始めた。

 

その中でも最近、

出店する20〜30代の中国人は本場中国の味を日本に広げようという

野心的な経営者が多いという。

中国人向けの予備校や語学学校の多い東京・高田馬場が筆頭だ。

JR小岩〜錦糸町駅エリア、横浜市伊勢佐木町でもガチ中華が増えている。