ビンテージ日本酒「夢雀(むじゃく)」 アーキス@山口県
地域産品開発のアーキス(山口市)が、
古民家や継続困難な飲食店の再生を通じた地域活性化拠点作りに力を入れている。
ビンテージ日本酒「夢雀(むじゃく)」の企画販売が主力だが、
地元産品を使った飲食メニューで地域外から観光客らを呼びこみ、
周辺住民の要望も吸い上げたサービスを提供する。
JR山口駅から北東へ車で50分ほど行くと、白くてモダンな建物が見えてくる。
アーキスと関連団体の企業組合アグリアートジャパン(山口市)が
2023年4月25日に開業する「LANDMARK.」(ランドマーク)だ。
市内の中山間地域である阿東エリアの活性化に取り組む施設で、
高齢化で継続が困難となっていた地元の名物飲食店「蘭土」を
買い上げる形で事業承継する。
「蘭土は地域の数少ない飲食店でなくなったら困る存在だった。
アーキスに相談したら、事業承継を快諾してくれた」。
アグリアート理事で、
近隣で電気店などが入居する複合店舗を運営する田村哲信氏は期待を込める。
蘭土時代から人気のステーキなどを提供するほか、
地元の最高級のコメやブランド牛、野菜を使ったメニューも開発。
インターネット環境を整備し、地元住民や移住者らのワーキングスペースとしても使えるようにする。
中山間地域である阿東地区は人口減が着実に進む。
国勢調査によると、1965年に1万5000人を超えていた人口が、
今では3分の1以下に落ち込んだ。
アーキスの松浦奈津子社長は
「移住者や観光客が地元住民らと交流できるイベントも企画し、
定住人口を増やしたい」と話す。
アーキスでは下関市の過疎地域の豊北エリアでも、
古民家を改修した交流施設「Animal Resort HARERUYA」(アニマルリゾート)を
5月中に開設する。
ドッグラン付きの飲食宿泊施設で、ペットと一緒に過ごせる。
平日ランチタイムはうどんや定食など、地元住民から要望のあった料理を提供する。
豊北エリアは絶景で知られる角島大橋を抱える一方、
飲食・宿泊施設が少ないのが課題だ。
松浦社長は「車で移動する人が多く、お金を落とす場所が少ないが、
ペット対応施設があれば観光消費額増につながる」と話す。
アーキスの主力商品の夢雀は、2015年に仕込んだ酒が22年、
750ミリリットル入り1本64万6800円で売れるなど実績を積む。
ビンテージ日本酒を始めたきっかけは酒の世界での成功ではなく地域の活性化で、
地域振興拠点の開業は起業の原点ともいえる。
地方創生で一定の成果を上げながら、
地元の支持を得られず衰退する事業は全国的にも少なくない。
観光客らを集めつつ、住民の憩いの場となる施設を実現すれば、
過疎地の課題解決の成功モデルの一つとなる可能性を秘める。
地獄温泉 大分県別府市
大分県別府市の鉄輪温泉にある博物館「地獄温泉ミュージアム」が、
子どもから大人まで楽しめると人気だ。
映像などを駆使し、雨水が温泉水になる50年の「地中の旅」を体感できる。
高齢化の波は温泉街にも押し寄せているが、
文化を残したいという古里への思いが建設につながった。
昨年12月にオープンした。
館内には床面のプロジェクションマッピングや迷路など
視覚的な仕掛けが施されているほか、
温泉水ができるまでの過程を4段階に分けて紹介している。
「温泉の歴史っておもしろい」。来館者が楽しそうに見入っていた。
鉄輪温泉は100度近い7つの源泉を「地獄」に見たてた観光施設を回る
「べっぷ地獄めぐり」が有名。風情ある街並みも観光客に人気だ。
くさぎ菜のかけめし 岡山県吉備中央町
岡山県のほぼ中央に位置する吉備中央町の郷土料理「くさぎ菜のかけめし」が、
地域に根付く食文化の継承を目指す文化庁の取り組み「100年フード」に認定された。
近年廃れつつあった料理を次の世代に受け継ごうと、町はPRに乗り出している。
くさぎ菜は、山野に自生し、
葉に特有の臭気があるシソ科の植物クサギの若芽を乾燥させたもの。
あく抜きや水で戻す作業など手間がかかるが、栄養価が高い上、
乾燥させると長期保存もできるため、
冬は氷点下になることもあるこの地域で重宝されてきた。
くさぎ菜のかけめしは、小さく切って油で炒めたくさぎ菜を、
鶏肉や錦糸卵、根菜などと共に味付けして白米にのせ、だしをかけて食べる。
だしの味がしみ込み、他の具材やご飯とよく合う。
同町観光協会の六反かゆこさんは「お茶漬け感覚でさらっと食べられる」と話す。
ただ、近年は手間の多さから敬遠する飲食店が増え、
現在町内で提供しているのは2軒だけだ。
観光協会は「このままでは町の郷土料理が消滅してしまう」との危機感から
文化庁への応募を計画。
料理に関する文献がないなど苦労もあったが、
町民らから「明治生まれの人から作り方を教わった」との声を集め、認定にこぎ着けた。
くさぎ菜のかけめしを提供する町内の飲食店によると、
認定前の注文は週1、2回だったが、認定後は1日3~6回に増えた。
六反さんは「まだまだ伸びしろがある。今後も魅力を発信していきたい」と期待を込める。